【岐阜県美濃市】豊かな川文化が生んだ“水うちわ”
日本全国には、その土地の文化や環境に合わせて作られてきた工芸品がたくさんあります。今回は岐阜県美濃市の家田紙工で作られている“水うちわ”をご紹介。高い機能性はもちろんのこと、デザイン性にも優れた水うちわの特徴や歴史についてお伝えしましょう。
水うちわとは
水うちわの特徴は、手すきの薄い美濃和紙(雁皮紙・がんぴし)に、ニスを塗って仕上げてあること。使用する和紙は乾いた状態でも陽の光が差し込むほど薄く、濡らすと半透明になりますが、その原料は植物(雁皮)の繊維なので、水に溶けてしまうことはありません。さらに、表面は天然のニスでコーティングされているため、形が崩れることもなく、むしろ水に浸した方が強度が増すとも言われています。
この水うちわには、いくつもの職人技が光ります。例えば、うちわに描かれる美しい絵柄。これには「すり込み」という技法が用いられています。
また、うちわの土台には、伝統的な丸亀うちわの技法が用いられ、国産の1本竹からうちわの柄と穂先が作られています。
そしてうちわの表面には、天然のニスがしっかりと塗られています。ニスを塗ることで、水うちわならではの透明感が出ますが、塗りすぎると和紙が反り返ってしまうのだそう。そのため、職人はその日の気温や湿度に合わせて、ニスの量を微妙に調整し、塗っては乾かす工程を最低3回繰り返すことで、薄くて丈夫な水うちわが完成します。
水うちわの歴史
中でもうちわは盛んに作られ、“岐阜うちわ”は岐阜県の伝統工芸品になっています。もともとは、長良川で行われる鵜飼を見に来た観光客への土産品として作られたのが起源とされ、室町時代には既に生産が行われていた記録があるのだそうです。明治に入ると海外からも注目されるようになり、生産量が飛躍的に増加しました。そんなうちわ好景気の1887年(明治19年)に、岐阜提灯の製造を営んでいた勅使河原直次郎氏が考案したのが、最初の水うちわだと言われています。
しかし、昭和に入ると日本人の生活が西洋化したことで、和紙や工芸品の需要が減少します。プラスチックやビニールを使ったうちわが大量に作られ、扇風機やクーラーが普及するようになると、水うちわの生産量は徐々に減っていきました。
その結果、水うちわの生産は昭和後期に一度途絶えてしまいます。しかし、近年になってクーラー病や災害時の暑さ対策などの観点から、再び注目を集めるようになりました。さらに、岐阜の文化や技術を絶やしてはいけないという職人の想いによって、家田紙工が手がける現在の水うちわが復活しました。
美しさと涼しさが楽しめる水うちわ
特にアウトドアやお子さんの運動会など、外でのイベントでは電気を使わず涼がとれるのでオススメです。薄い和紙でできている水うちわはとても軽く、天然竹はプラスチックよりも良くしなるため、水に浸していない場合でも一般的なうちわと比べて、楽に大きな風を起こすことができます。
さらにデザイン性が高いので、使わない時にはインテリアとして飾るのもオススメ。最近では、アーティストとコラボレーションしたシリーズもあり、部屋の雰囲気や自分の好みに合わせて選ぶのも楽しみの一つです。
小さなサイズの「小丸」タイプは、台座付きなので、使わない時にはお部屋や玄関に飾りやすくなっています。夏場以外でも、和の雰囲気や風情を楽しめるアイテムとして、おすすめです。